記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派10

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「それだけって……」

 

 残ったおにぎりを保存パックに移し替えながら、幾ヶ瀬は肩を落とした。

 

「大事な日なのに本当に覚えてないんだね、有夏は。何か最近、俺ばっかり頑張ってる気がする」

 

「な、何だよ、有夏だって……」

 

 いつになく気落ちした声色に、有夏が戸惑いの声をあげる。

 

「有夏だって何? 有夏が頑張ってるのってドラクエだけじゃん」

 

「そ、そんなこと……」

 

「セックスに不満を言うだけじゃん。たまには有夏も頑張ってよ」

 

「ふ、不満なんて言ってねぇだろ」

 

 語尾が跳ねあがりそうになるのを、これでも堪えたのだろう。

 

 だが、幾ヶ瀬に気遣いが通じた様子はない。

 

「言った! マンネリだって言ったもん!」

 

「しつこっ!」

 

 このやりとり何度目だ!?

 

 第一有夏は「マンネリ」なんて言った覚えはなかった。

 

 それとなく匂わす言葉を吐いたことは事実かもしれない。

 

 そのおかげで変な男娼館やら妙な芝居プレイをさせられる羽目になったのは記憶に新しい。

「記念日を一緒に過ごしたい派・気にしない派11」につづく

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