春の嵐(1)

 【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】

「てか、ムリだって」


 スマホを耳にあて、有夏が叫んだ。


 珍しい光景だと、床に正座して洗濯物をたたみながら幾ヶ瀬が横目で見やる。


 有夏が電話をしているなんて。

 正確に言えば、有夏に電話で話す相手がいるなんて。

 しかもこんなふうに感情を露わに話ができる相手なんて。


「いきなりとかムリだし。せめて1週間前に言っといて……え? ホントにムリだって。えぇ!? ちょっ、お母さん?」


 ──どうせ相手はお母さんだろうと思っていたが、リアルだったらしい。


 幾ヶ瀬はそっとため息をついた。

 我が恋人ながら、電話する相手が母親しかいないというのは悲しくなる。


 まぁ、同時に安心もするわけだが。


 電話の相手が知らない男、あるいは知らない女だったら?

 それはそれで、気になって仕方なくなるからだ。


「ちょっ、お母さんってば! 酷ッ!」


 一方的に通話を切られたか、画面を見ながら有夏が呆然としている。

 やがて、ゆっくり振り向いた。


「いぐぜぇぇぇ…」


「な、なに……?」


 この感じは確か以前も……?

 洗濯物をたたむ手を止めて、幾ヶ瀬は用心深く有夏の方に視線を送った。


「ありかのへや、がだづげでぇぇぇ……」


 またか!

「春の嵐2」につづく

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