アマゾンがくるまで1

【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】




 やわらかな唇を押し入って、口腔に舌が侵入する。

 迎えるそれの反応の乏しさに戸惑ったか、男は一旦唇を離した。

「……有夏?」

「ん……んん?」

 感触を楽しむ余裕はあるらしい。

 有夏と呼ばれた青年の舌先がチロリと自らの唇をなぞる。

「なにぃ、幾ヶ瀬?」

「何じゃなくて……」


 再び重ねられる唇。

 狭い1DKのアパートの室内。
 空気を揺らすのは次第に荒くなる呼吸音と、動く舌と唇がたてるなまめかしい音の微動のみ。

 煌々とつけられた灯かりを気にするでもなく、男が二人折り重なっていた。

 床に足を投げ出しベッドにもたれるように座る若い男──有夏は指先までだらりと垂らし、されるがままという体勢だ。

 右手に有夏の細い肩、そして柔らかな薄茶の髪を左手で撫でて、口づけを繰り返すのは幾ヶ瀬と呼ばれた黒髪の男。

「痛った」

 有夏に言われ幾ヶ瀬は少し笑った。
 眼鏡を外し、側の座卓に置く。

「痛ったいし」

「ごめんごめん」

 眼鏡の縁が額に当たったのだろう。

 顔をしかめておでこをさする有夏の手首を、幾ヶ瀬はつかんだ。

「有夏……」

 低い声で名を呼ぶと、有夏の肩が微かに震える。

 幾ヶ瀬の唇が有夏の耳たぶを甘く噛み、ゆっくりと舌が顎のラインを降りていく。

「はぁっ……どうしよう、幾ヶ瀬」

 有夏の声が揺らいだ。




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