ここも、いいところ(バカップル攻さんの述懐)1

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 未だ夜は明けない。


 窓からは相変わらず人工の青い光。街灯だ。

 月のように時間によって位置を変えない。

 だから、今が何時なのか見当がつかない。


 喘ぐような呼吸が徐々に落ちついたためか、傍らに横たわる男がぴたりと身を寄せてきた。


「どしたの、有夏?」


「んーん……ふふっ」


「何? どうしたの」


 狭いベッドに寝ころんだまま、幾ヶ瀬は身体の向きをずらせた。


 恋人の顔はすぐ目の前。


 鼻と鼻をくっつけるように更に近付くと、やはり有夏はニヤつくように頬を歪める。


「だって……」


 問いつめる視線に、逆に笑いがこみ上げたか。


「だって。いくせ……ふっ……ふふっ」


 やはりクスクス笑う。


「なになに? 俺が何なの。何笑ってんの?」


「だって、さっきは幾ヶ瀬……」


 もう遠慮する様子もなくヒャヒャと笑い転げる。


 何だか分からない幾ヶ瀬は、取り残されたという思いを不機嫌な表情として表そうとするのだが、あえなく断念した。


 目の前で何だか楽しそうな様子の有夏につられて、頬が緩んでしまう。

「ここも、いいところ(バカップル攻さんの述懐)2」につづく

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