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 乱暴に扉が開かれた。

 

「ありかーっ!!」

 

 夜中だというのに、玄関先で絶叫するのは幾ヶ瀬だ。

 

「有夏ぁ、俺もう仕事やめるぅ!」

 

「おー、おかえり。遅かったな」

 

 PS Vitaから視線をあげて、有夏ときたら涼し気な表情だ。

 

 そんなとこで喚いてねぇで部屋に入れよとの言葉に、幾ヶ瀬は素直に靴を脱いで駆けてきた。

 

 小走りの勢いそのままに有夏に抱きつく。

 

 ベッドに腰かけゲームに興じていた有夏は自然、押し倒される格好となるわけだ。

 

 彼の上にのしかかって、幾ヶ瀬は実に情けない面である。

 

「俺もう疲れた。仕事辞める!」

 

「あぁ……」

 

 有夏、半眼をとじた冷たい表情だ。

 じっとり視線に気付いた幾ヶ瀬は、顔をあげる。

 

「あぁって何なの、有夏?」

 

「いやぁ……だって、ねぇ?」

 

 有夏の口の端が歪められた。

 繁忙期になると響き渡る「仕事辞める」「もう辞める」「明日辞める」コール。

 もはや連日である。

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