冬のあさ1

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 午前6時に、この家で人が活動しているのは稀だ。


「有夏、見てっ」


 語尾が跳ねている。


 カーテンを開けて窓に額を付けているのは、長身の男だ──この部屋の主、幾ヶ瀬である。


 半分閉じていた目が、外の白を認めるや否や、しっかりと開かれた。


 トイレにでも起きたのだろう。

 すぐにベッドに戻るつもりらしいのは、眼鏡をかけていないことからも分かる。


 カーテンの隙間から差し込む光がやけに眩しいので外を見たのだろう。夜のうちに積もった雪に驚いた様子だ。


「有夏、起きて」


「ビックリするから、ホラ見て」


「ちょっとでいいから、起き……ちょっと!?」


「おーい、あり……」


「……アホりか? もしもーし、アホりかさんー?」


「世界一のアホりかさん? 怠け者のクズりかさん?」


 少々ドキドキしながらの、渾身の悪口。


「冬のあさ2」に続く

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