【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】
「まさかこんなことが現実にあるなんて……」
「いや、ありえない。何かの間違いじゃ……」
「信じられないよ。絶対におかしいって……」
ブツブツ。ブツブツ。
壁の一点を見つめ、独り言を繰り返すのは幾ヶ瀬である。
アリエナイ、アリエナイ……と呟きながら、かれこれ数十分が経ったろうか。
「何やってんの、いくせー」
幾ヶ瀬の葛藤をよそに、相変わらずノンキな声は有夏のものだ。
足元から聞こえてくるのは、当の有夏が床に転がっているせいである。
分厚い雑誌を左手に、右手だけをプラプラ振ってみせた。
「ノドかわいた。のーみーもーのー」
例によって、である。
これはナマケモノ以外の何者でもない。
そんな有夏を見下ろす幾ヶ瀬のじっとりした視線。
「俺の唾液で良ければ飲む?」
「のむのむ。ゴクゴクって……そんなん飲むか―――ッ!!」
跳ね起きて叫んだ有夏。
まさかのノリツッコミに、自分ひとりで爆笑していた。
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