お風呂をめぐるあれこれ(表)(12)

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  脅かし方が徐々に雑になっていくのだが、幾ヶ瀬は律儀に反応してくれる。


 有夏の腕の筋肉がプルプル痙攣するのは、笑いながらも必死で扉を押さえているからだ。


 外から鍵は掛けられないものだから、できるだけ長く楽しむためには力で扉を押さえるよりほかない。


「ほら、鏡の奥にいるから! 見えるから! ほぉら!」


「やめ……はぅっ…………」


 笑い転げてから、有夏は異変に気付く。


 すりガラスの向こうに幾ヶ瀬のシルエットが見えないのだ。


「お、おい?」


 まさか失神した?

 それとも兵隊さんに連れていかれ……?


「ウソウソ。超事故物件じゃん」


 言いながら扉を開けた有夏。


 瞬間、悲鳴がほとばしる。

 水流が顔面を直撃したのだ。

 冷たさに一瞬目がくらみ、何が起こったか理解できない様子。


「ほら、有夏も! へいたいさんの血だよっ!」


 言いながらシャワーを構える幾ヶ瀬。


「あ、あんなに怖がってたのに。幾ヶ瀬め、よくも……」


 片手で顔を拭っている間に、全身をずぶぬれだ。


「久しぶりにお湯を浴びたら我に返ったんだよ。心霊写真なんて、どうせ有夏がやったんだ。くらえっ!」


 散々脅かされた復讐を果たした故か、幾ヶ瀬の表情の晴れやかなこと。


「お風呂をめぐるあれこれ(表)(13)」につづく

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