中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる1


 という表現がやはり相応しいか。

「有夏の唇、やわらかい……」

 互いの口の中をかき回し、唾液を交換し呑み込む。

 舌を舐めて絡めて。

 最後は唇を軽く合わせて終わる、いつものくちづけ。

 日に何度か行われるその行為だが、今は夕食の支度まで少し時間があるからか、幾ヶ瀬のキスは執拗だった。

 何度も音をさせて唇を犯しながら、Tシャツの上から有夏の身体を撫でまわす。

「んん……」

 有夏が僅かに身を引いた。

「なに、幾ヶ瀬。するの? いま?」

「え、しないの?」

 その気がなかったとしても、思わず欲情してしまうキスだったのに。

「ん…別にいいんだけど。何かねぇ…何かねぇ……?」

 有夏、浮かぬ顔だ。

 幾ヶ瀬は眉をひそめた。

「嫌ならしないよ? どうかしたの、有夏?」

「んー……特にイヤでもないけど。別にどっちでもいんだけど?」

 どうにも煮え切らない返事だ。

「なんていうか、幾ヶ瀬が……」

「なに? 俺が何かした? キスしたのが嫌だった?」

 戸惑いの思いからか、語尾が掠れた。

「ぅうーん……」

 そんな幾ヶ瀬をチラリと見やって、有夏。肩を竦める。

「だって幾ヶ瀬、有夏に当たり前みたいに…セッ、セッ……するし。ちっとも有り難がってないし。何かこう…何かねぇ……」

 セックスとはっきり言えないらしい。

 それなのにセックスのマンネリ化に不満を抱いているらしい。



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