中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる3


「出すのをとにかく我慢して、長時間楽しむってのが理想かな。いや、料金体系でいうなら1晩幾らって方がいいか。1晩抱き放題、挿れ放題、射精し放題」

「……最ッ低だ、コイツ」

 完全に引いてしまっている有夏の態度にも気付かない。

 金の絡む思案に入った幾ヶ瀬は、誰が何と言おうと真剣なのだ。

「待って待って。一晩って何時間? 日没から日の出まで? 夏と冬では夜の長さが異なるから、同じ金額ってわけにはいかないよね。だいたい日中にだってするんだし。夜に始めて昼に目覚めてもう1回って。よくあるもんね。なぁ有夏、どうしよう?」

「……どうしようって聞かれても、このヘンタイをどうしてくれようとしか言いようがないよ」

 てか、下らねんだよッ! と叫ぶ有夏を、まぁまぁと宥める幾ヶ瀬。

 性分なのだろう。
 金の絡む問題に明確な決着がつかないというのは、どうにも気持ちの悪いもので。

1時間いくらって金額設定して、客が時間を指定するってのが妥当かな。もちろん延長アリで。そもそものシステムを構築しないと。なっ、有夏……グハッ!」

 空気が潰れるような悲鳴。

 有夏の掌底が幾ヶ瀬の側頭部をはたいたのだ。

「客って何だよ。有夏に客とらす気かよ。1人で転職しろ! コックやめて、そ・ゆう店でもすりゃいいんだ!」

 いちいち「な、有夏」と同意を求められるのが余程に鬱陶しかったようだ。
 もう一度幾ヶ瀬の頭を叩く。

 いやいや、転職ってのはエネルギーを使うもんだから、当分はちょっと考えられないよと頭をさすって苦笑いを返す幾ヶ瀬に、堪えた様子はないが。

 彼にとって可愛い有夏が怒ったところで、それはやはり可愛いものでしかないのだ。

「じゃあさ、有夏。ここをそういう店にしない?」

「は?」

「は? なに?」

「は? 意味が……」

 有夏の声がどんどん低くなっていく中、幾ヶ瀬の表情はいつになく明るい。

「有夏がこの店のNo.1で、俺が馴染みの客って設定で」

「キモイキモイ! 何言って……」





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