中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる4


「……変わったことしたいなんて言ってない」

 有夏の苦情を軽く無視して、幾ヶ瀬は続ける。

「どうせなら夢のイタリアを舞台にしようよ!」

 べつに有夏はそんな夢持ってないという反論は、もう幾ヶ瀬の耳には入っていないようだ。

「ルネッサンス末期のイタリアの男娼専門の売春宿で、客層はそこそこの金持ちって感じ。とんでもなく高級な所ってわけじゃないけど、庶民が行けるようなレベルでもないと」

「キモ……」

 何だか設定に凝りだした。

「有夏、名前はどうする?」

「なまえ?」

「ほらぁ、源氏名っていうの? ヨーロッパっぽい名前考えてよ」

「何で有夏が……。じゃあ、メッシ」

「……めっし? サッカーの? え? 今頃?」

「うん、メッシ」

「そ、そう……」

 アルゼンチンの選手だし、第一「メッシ」は苗字だ。

「……有夏がアホなのを忘れてたな」

「は?」

 小さな声を聞き咎めて有夏が口をとがらせる。

「うん、アリカでいいか」

 ノリに乗ってる幾ヶ瀬、勝手に命名した。

「アリカは男娼専門の娼館の売れっ子ね」

「う、うん?」

 イタリアとか客層がとか言い出したあたりから、有夏は呑まれてしまっているようで。

 うわ言のように「キモイキモイ」言いながらも、素直に頷いている。





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