中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる6


「メスブ…!? わ、悪かったな。どうせアタマ……」

 文句をぶつけようと開いた口を、幾ヶ瀬の唇が覆う。

「ううんっ……」

 上唇と下唇の間を丹念に舐められ、有夏の肩から力が抜けるのが分かった。

 幾ヶ瀬は唇を離そうとはしない。

 舌先を使って有夏の上顎を内から撫で、それから彼の舌を自らの口中に引き入れると軽く歯をあてた。

 抱き寄せた有夏の腰が震えているのを確認し、ようやく幾ヶ瀬は顔を離す。

 目の前に見える耳が真っ赤だ。

「アリカ、可愛い……」

 耳たぶに指先を這わすと、たちまち双眸が潤みだす。

「幾ヶ瀬ぇ……」

「幾ヶ瀬じゃないよ。お客さ……うぅん、イクセさんでいいか。呼んでみて」

 有夏の頭を抱き寄せるように近付けて、その耳元で繰り返す。

「ほら、呼んで」

「ヤだよ」

「悪い子だね、客の望みを聞かないなんて」

 言いながら幾ヶ瀬……いや、イクセの唇はニヤリと笑みを形作る。

「有夏、ちょっとした遊びだって。言うこと聞いてくれたら、好きな物なんでも買ってあげるから、ね」

 悪戯の相談でもするかのように小声で。有夏がチラリと彼を見やる。

「ホントに何でも? すっごい高いやつでも……?」

 背筋を這う快楽に押されたのか、それとも何でも買ってあげるに乗ったのか。

「イクセさんっ!」

 有夏、否──アリカの両の指が幾ヶ瀬の髪をかき回し、その耳元に唇を寄せる。

「イクセさん、来てくれて嬉しい」

 ふぅっと耳の穴に息を吹き込まれ、幾ヶ瀬がギュッと目を瞑る。

 口元がだらしなく崩れていた。

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