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「アリカはそんな頭悪いメスブタみたいな喋り方はしないの!」
「メスブ…!? わ、悪かったな。どうせアタマ……」
文句をぶつけようと開いた口を、幾ヶ瀬の唇が覆う。
「ううんっ……」
上唇と下唇の間を丹念に舐められ、有夏の肩から力が抜けるのが分かった。
幾ヶ瀬は唇を離そうとはしない。
舌先を使って有夏の上顎を内から撫で、それから彼の舌を自らの口中に引き入れると軽く歯をあてた。
抱き寄せた有夏の腰が震えているのを確認し、ようやく幾ヶ瀬は顔を離す。
目の前に見える耳が真っ赤だ。
「アリカ、可愛い……」
耳たぶに指先を這わすと、たちまち双眸が潤みだす。
「幾ヶ瀬ぇ……」
「幾ヶ瀬じゃないよ。お客さ……うぅん、イクセさんでいいか。呼んでみて」
有夏の頭を抱き寄せるように近付けて、その耳元で繰り返す。
「ほら、呼んで」
「ヤだよ」
「悪い子だね、客の望みを聞かないなんて」
言いながら幾ヶ瀬……いや、イクセの唇はニヤリと笑みを形作る。
「有夏、ちょっとした遊びだって。言うこと聞いてくれたら、好きな物なんでも買ってあげるから、ね」
悪戯の相談でもするかのように小声で。有夏がチラリと彼を見やる。
「ホントに何でも? すっごい高いやつでも……?」
背筋を這う快楽に押されたのか、それとも何でも買ってあげるに乗ったのか。
「イクセさんっ!」
有夏、否──アリカの両の指が幾ヶ瀬の髪をかき回し、その耳元に唇を寄せる。
「イクセさん、来てくれて嬉しい」
ふぅっと耳の穴に息を吹き込まれ、幾ヶ瀬がギュッと目を瞑る。
口元がだらしなく崩れていた。
口元がだらしなく崩れていた。
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