中世ヨーロッパの男娼館での営みを妄想シテみる12【完】







「……はあっ、幾ヶ瀬。も、いって……ば」

 唾液をダラリと頬に垂らして、有夏が息をつく。

「何でもっ……買ってくれるって言った、よね。有夏、欲しいものがある」

 いろいろ我を忘れるくせに、そういうことはちゃんと覚えているらしい。

 幾ヶ瀬は苦笑いで返した。

「どうかなぁ、今のじゃ買ってあげられないかなぁ」

「は? 何で」

「だってアリカ、男娼の仕事なにもしてなかったでしょ」

「男娼の仕事ってなに……。変態プレイに付き合ってやったってのに」

「変態プレイって……」

「てか、幾ヶ瀬はどういう世界にハマってんの? 心底キッモいわ」

 今更ながら若干引き気味の有夏に対して、幾ヶ瀬は「だって楽しいでしょ」と笑う。

「俺だって分かってるから甘えが出ちゃうのかな。次は他のお客を相手にしてみよっか」

「ほかの客……それって何? 幾ヶ瀬、遂に有夏のこと売るの?」

 有夏がぽかんと口を開けた。

 遂にって何、そんなわけないでしょと幾ヶ瀬が有夏の上唇を舐める。

「だから、例の娼館の別の客って設定だって。イクセさんが来ない日にアリカを買った客で……」

「嘘だろ。まだ続くの、それ? 変態。幾ヶ瀬、へんったいっ!」

 変態と言われニヤつく幾ヶ瀬。

「まぁいいでしょ。他の男に抱かれながらも心はイクセさんに、みたいな。身体は許すけど、キスはイクセさんとしかしない、みたいな」

「……自分でイクセさんとか言うし。キモすぎて死ぬ。てか有夏、そういう仕事だったらチューくらいするわ。誰とでもするわ。ガンガンするわ」

「有夏……!」

 声をあげてから幾ヶ瀬、困ったように恋人の髪を撫でる。

「実際の有夏はそんな仕事しちゃ駄目だよ」

「うん。有夏、仕事しない」

「う、うん? 堂々とニート宣言を……」

 指を絡めてベッドに重なったまま、二人はなかなか動こうとしない。

「それで、有夏の欲しいものって何なの?」

 思い出したように幾ヶ瀬が顔をあげた。

 ベッド、と有夏が答える。

「え、このベッドじゃ嫌? やっぱり狭いか。それとも自分用のが欲しいの? ちゃんとあるじゃない。有夏のゴミ屋敷……いや、隣りの部屋に」

 ゴミ屋敷と言われ、頬を膨らませた有夏が「重い」ともぞもぞ動き出す。

CMで見たやつ。電動式で頭の部分がウィーンって起き上がるアレ」

「……それって介護用じゃ」

「有夏、快適姿勢でゲームするよ」

 一瞬でその状況を思い描いた幾ヶ瀬、有夏の両頬をバチンと音たてて挟んだ。

「そんなの買ってあげられません!」



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