夢は売りもの1

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「ありかぁ、ウフフッ」


 ニヤニヤ。ニヤニヤ。

 一言でいえば「気持ち悪い」である。


 頬がだらしなく緩んで、口の端が大きく歪んでいた。


「ねぇ、どうする? どうする? ウフフ……ヒヒッ」


 独り言か? ニヤニヤが止まらないといった様子なのは、幾ヶ瀬──休日の昼前の幾ヶ瀬であった。


 珍しく連休をもらえたとかで機嫌が良い…ということかと思われたが、異様なニヤつきを見ると、理由はそれだけではないようだ。


「ねぇ、どうしよう。ねぇ、どうする? ウヒヒッ」


 だらしない笑顔でそんなことばかり繰り返す。

 本当に意味が分からない。

 あと、笑い方が気持ち悪い。


 ベッドの脚にもたれて両手でコップを持ったまま、有夏は曖昧に頷いてみせた。


 逆らうでもなく同意するでもなく。


 コミュ障ながらも、これは身についた処世術であった。


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