独りのときのテンションたるや9【完】

【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】



  幾ヶ瀬はめげてしまった。

 探り出そうとしたが、心が折れた。


 思春期の息子を持つ母親って、毎日こんな感じなのだろうか。


「じゃなくて!」


 キッチンで叫ぶ幾ヶ瀬。


「俺がお母さんなわけないじゃない! あえて言うならお父さんだよ? ね、有夏?」


 勢い込んで部屋を覗くと、当の有夏はコタツに潜り込んだ体勢でスヤスヤ寝ていた。


「……どんだけ寝るんだ、こいつ」


 ちょっと不安になってしまう。


 それに、と思う。


 お母さんでもお父さんでもないし。親子なわけないし。


 違うし! 俺たちは、そ・う・い・う間柄なわけだし!


「そういう関係なわけですし、俺は今から寝ている有夏さんにキスをします!」


 お玉を片手に宣言して、幾ヶ瀬は足音荒く部屋に入った。

 こたつのそばに座り込み、眼鏡を押し上げる。


「前髪が伸びましたね、有夏さん」


 人差し指で絡めとった髪がサラサラと音をたてた。

 睫毛がゆらりと揺れている。


 スヤスヤと心地よい寝息を聞きながら、幾ヶ瀬は小さなあくびを漏らした。

 心地よい微睡みが二人を包む。


「独りのときのテンションたるや」完

31「夢は売りもの」につづく

独りのときのテンションたるや1はコチラ
独りのときのテンションたるや2はコチラ
独りのときのテンションたるや3はコチラ
独りのときのテンションたるや4はコチラ
独りのときのテンションたるや5はコチラ
独りのときのテンションたるや6はコチラ
独りのときのテンションたるや7はコチラ
独りのときのテンションたるや8はコチラ
独りのときのテンションたるや9はコチラ】【完】

29「秘密の撮影会」はコチラ

31「夢は売りもの」はコチラ


0 件のコメント:

コメントを投稿