魔法のアイテム1

【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】

「いやー、無かったわ」


 玄関を開けるなり、幾ヶ瀬がため息をついた。


「なにが?」


 有夏が呆れたように首を傾げるのも、まっとうな反応といえるだろう。


 幾ヶ瀬はスーパー帰りであるらしく、両肩と手にエコバッグを提げている。


「今日セールだからさ。買いだめに行ったんだけど、無かったわ」


「だから、なにが?」


 いい加減イライラする返事であるが、幾ヶ瀬は尚も「アレだよ、アレ」なんて言っている。


「分からん、分からん!」と怒鳴る有夏。

「アレって何だよ? どこのオバチャンだよ」


「ハロウィン仕様の袋菓子、半額になってんじゃないかと思ったんだけど、普通に2割引きだった」


「……何だよ、それ」


 ああ、俺はもう半額でないとお得感を味わえない体になってしまった……なんてブツブツ言いながら、幾ヶ瀬はテーブルにバッグをおいて腕をさすり始める。


 で、何買ったんだよと有夏が袋を漁る光景はいつものものだ。

 大好物のビスコの大袋を見付けると、早速取り出した。


 袋を破こうとする手を、幾ヶ瀬が止める。


「駄目だよ、有夏。ほっといたらお菓子ばっかり食べるんだから。今日は俺がアップルパイ焼くって言ったろ」


「ちょっとだけ! 1袋だけ!」


「いけません!」


「魔法のアイテム2」に続く

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