魔法のアイテム6

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 「アリカが言うにはね。自分にはイクセさんしか居ないのに、イクセさんには仕事も家庭もあって自分だけを見てくれるわけじゃないからって。それはもちろん分かってるんだけど、目の当たりにするのは辛いからって……はぅぅ……アリカぁ」


 鼻をすすり始めた。


「いくせー? 戻ってこいー?」


「……そうなんだよ、色々あるんだよ」


 目尻を指で拭うと、幾ヶ瀬はガスを止めた。


「有夏、お昼食べたら今のクダリを実践……」


「やんねぇよ」


「そう言わないで……」


「知らねぇよ」


「ね、あり……」


 突然、幾ヶ瀬が息を呑んだ。

 そして沈黙。


「なに?」


 気を引きたいが故の幾ヶ瀬の作戦だろうか。疑わしく感じながらも、有夏とて気になるのだろう。「どしたよ」ともう一度尋ねた。


 幾ヶ瀬は唖然とした顔で有夏の胸元を指さしている。


 有夏が咄嗟に身を捩ったのは、幾ヶ瀬の指先が乳首を狙っているように感じたからだろう。


 だが、今回ばかりはそういうわけでもなかったようで。

「魔法のアイテム7」につづく

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