『閲覧履歴に基づくおすすめ商品』は人物の内面を完全に晒す3

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「よるのじゅ……」


 有夏の返事など待つ気はないというように幾ヶ瀬がたたみかける。


「夜の11時半だよね! 勤務時間なんと13時間! 早番の入り時間に、遅番の上がり時間。何これ。ねぇ、何なの、これは……」


「あー……とにかくフロ入って落ち着けや、な?」


 幾ヶ瀬は聞いちゃいない。

 有夏に抱きついたまま、顔だけあげて「おぅおぅ」と吠えている。


「最近、ふざけたカップルばっか来やがる。あいつら全員、滅せよ」


「ちょー、いくせー?」


 滅せよ、の声のあまりの低さに有夏は顔を引きつらせてPS Vitaを横に置いた。


 幾ヶ瀬の勤務先レストランは、先週末から「春恋特別コース」の提供を始めたらしい。

 春よ来いとかけてのネーミングに、店長ひとりがご満悦だと幾ヶ瀬がぼやいていたのは、つい1週間前のことだ。


「あのイカれた店長、SNS映えする苺とチーズのデザートなんて作りやがって。いいかげん映え発想から離れろよ! あいつ、いつ死ぬんだろ。ねぇ、あいつはいつ死ぬの!?」


「さぁ。有夏にはちょっと分からないかな」


「だよねぇ。あ~あ~」


 季節のプランを始めただけで従業員に死を願われるなんて、店長もこれは青天の霹靂であろう。


 職場に対して定期的にキレて喚くのは、幾ヶ瀬のクセと言っても良い。

 有夏の反応が淡白なのも、もう慣れっこになっているからだ。


「やっぱり、YouTuberになるしかないのかな。ホラージャンルが難しすぎたのかも。別のジャンルなら俺でもできるよね! ねぇ、俺には何が向いていると思う?」

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