ここも、いいところ(バカップル攻さんの述懐)3

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 だから、幾ヶ瀬は言葉を濁した。


「有夏の良いところを述べよって話だよね? うーん……えっと、うぅーん……あっ、食べ物の好き嫌いがあまりないよね。あと、えっと、うーん……そうだ! 寝つきがいいかな」


「……絞り出したな。そこまで考え込まないと出ないか? 有夏の長所は」


「いやぁ……あっ! 怒ってもめげない鉄メンタル(家の中限定!)」


「ソレほめてねぇし。なんだよ、家の中限定って」


 しまった。間違えたか。


 有夏のご機嫌を慮って、幾ヶ瀬は一瞬うろたえる。


 しかし……あるだろうか。目の前のニートに良いところなど。


 顔はいいか。確かに顔はいいと思う。うん。

 むしろ良いのは顔だけ、という言葉を幾ヶ瀬は先程から口に出しかかっては呑み込んでいる。


 そう、ここで間違えてはならない。


「有夏の良いところはいっぱいあって。実際、口では表しにくくて……そう、えっとね……」


 もういいよと、有夏は逆に呆れたような口調だ。

 さして深刻さは感じられないが、それでも幾ヶ瀬は踏ん張った。


 有り体に言えば、相手の機嫌をとる──事後においてこれはこれで非常に重要なことなのだ。


「あ、有夏は格好良くて可愛くて、好き嫌いがなくて、あと何だっけ? あっ、寝つきがよくて完璧だよ」


「はぁ?」


 しまった、これも間違えたか?

 いや、まだいける。踏ん張れる。

「ここも、いいところ(バカップル攻さんの述懐)4」につづく


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