アマゾンがくるまで3

【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】


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 賃貸アパートの2階。
 端の角部屋が有夏の部屋で、幾ヶ瀬はその隣りに住んでいる。
 つまりこの部屋だ。

 家が隣り同士というのは、彼らにとっては色んな意味で都合が良いようで。
 しかしこの薄い壁に遮られているというのは、また別の葛藤をももたらすようで。

「ねぇ、有夏ぁ、一緒に住もうよ」

「は?」

 鬱陶しがられていると悟ったのだろう。
 幾ヶ瀬は俯いてしまった。

「だってさ、こういう時不便だし。それに一緒に住んだら家賃も半分ですむし。どうせ有夏はいつもうちに入り浸ってるんだから。何だったら広い部屋に移ってもいいし」

 あ、そうだと幾ヶ瀬は手を打った。

「とりあえず俺の部屋を引き払って、有夏のとこに一緒に住もうよ。有夏ん家、角部屋だからちょっとだけ広いし、お風呂に窓もあるし」

「うーん……」

 有夏が気まずそうに首を振る。

「ご、ごめん、有夏」

 温度差を感じたか、幾ヶ瀬も黙り込む。

 彼の表情が凍り付いたことに、さすがの有夏も焦ったようだ。

「や、違くて! 住むにしても、有夏の部屋はちょっとマズイかなって……それだけ」

「何で?」

 幾ヶ瀬の声が低い。

 頭の中で何パターンかの「ちょっとマズイ」理由を考えているに違いない。

「……有夏?」

 依然として声は低いままだ。

「また散らかしたの?」

 それはそれは綺麗な顔を、有夏は信じられないくらいに歪めた。

「……またってか、散らかしたってか、別に散らかすつもりとかじゃなくて!」

 後半は逆ギレだ。声を荒げてプイとそっぽを向く。

「お風呂の窓も?」

「は?」

「お風呂の窓も見えないくらいゴミで埋め尽くされてるの? また!?」

「………………」

 有夏、と怒鳴られて彼は不貞腐れたようにその場に転がった。

「ゴミじゃないし……全部大事なものだし……」

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