春の嵐(4)

 【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】


「な、何かなぁ、有夏サン? 面倒事を人に投げたから、自分はもう関係ないとでもいう顔かなぁ? 俺はまだ片付けてあげるなんて言ってないんだけどなぁ?」


 有夏の膝で踏まれたタオルを強引に引っ張る幾ヶ瀬。

 入念にパタパタと払ってから畳んだが、さりげない嫌味が有夏に伝わっているとも思えない。


 窓の外に夕ぐれの色を見ながら、幾ヶ瀬。再びのため息。


 ──明日は早番だったよな。嫌だなぁ、あの部屋の掃除は疲れるんだよな。何ていうか精神的にどっと……。


「……お姉さんは何時に来るの? 夜くらい?」


 ヤッターとばかりに笑顔を作ると、信じられないことに有夏は幾ヶ瀬の膝に乗っかった。

 いつのまにやら、手には今週号のジャンプがスタンバイしているではないか。

 幾ヶ瀬を座椅子代わりにジャンプを楽しもうという腹か。この状況で?


「もうすぐったらもうすぐじゃね? 1時間くらい? 有夏、知らないし」


「いやいやいやいや、有夏さん?」


 アマゾンの箱と緩衝材と漫画とゲームとフィギュアが散乱したあの部屋の有り様を思い出す。


「あれを1時間で片せる人がいたら、それは魔法使いだって。掃除のプロだって半日は……いや、もっとかかるって! 第一、あの汚部屋は通常料金じゃ無理だって!」


「春の嵐5」につづく

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