春の嵐(6)

 【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】


 幾ヶ瀬の肩に額を押し付けて、そればかりか上体に体重をずっしり預けてきた。

 見た目ほど落ち込んでいる訳じゃないと思う──そうは思うが。


「あり……」


 息を吸うと、甘い匂いが鼻孔をくすぐる。

 幾ヶ瀬も有夏の髪に顔をうずめた。

 息を深く。吸って、吐く。


「ありか、いいにおい……」


 ああ、そうか。コイツはさっきまでお菓子を食ってたな。

 ラムネを大量に食べてたな。

 うん、これラムネの匂いだ。

 あと、ひきこもりで外に出ないから汗をかかなくて、だから良い匂いなだけなんだ、うん。


 「うんうん」と、噛みしめるように幾ヶ瀬は頷いた。

 うん、からくりは分かった。


 分かったところで、しかし、この状態はどうしようもない。

 掃除、という単語が頭の中から急速に霞んでいく。


 ほんの少し、手を伸ばした。

 膝の上に乗っている有夏の腰に触れる。


「春の嵐7」につづく

《PR》

【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】


0 件のコメント:

コメントを投稿