春の嵐(13)

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「胡桃沢家の姉、怖ぁ……」


 得体の知れぬ凄みに、幾ヶ瀬も緊張していたのだろう。

 ふぅと吐く呼吸の長いこと。


 ふらつく足取りで部屋に戻ると、バルコニーから有夏がこそこそ入って来る様が目の前に。


「有夏、間男みたいだよ……」


「え? まおと……なに? まお?」


 ──これは確かに。本物の馬鹿だ。


 いろいろ突っ込みたいことはあれど、黙って包みを差し出す。


「ちょっと名前聞きそびれたけど、毎年行ってるビーチのお土産だって」


「ヌーディストビーチ?」


「うふ……えっ、何!?」


 条件反射で「うふふ」と言いかけて、幾ヶ瀬は目を見開く。


「今、何て? ヌーディ……?」


「涼華姉だろ、今の。毎年アメリカのヌーディストビーチに行ってんだよ。本当の自分に戻れるんだって」


「………………」


「なに? どした?」


「胡桃沢家……結構濃いのな」


「そぉ?」


「春の嵐14」につづく

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