するりと手が伸びて紙袋をもう1つ押し付けると、女は(ひどくニヤつきながら)隣りの部屋へ帰っていった。
ちゃんと足音がして、扉を開ける音、閉める音。
さらに鍵を掛ける気配も伝わってくる。
「霊って……。幾ヶ瀬、霊って……」
有夏は部屋に戻って紙袋の中身を吟味している様子だ。
まだ笑っているのだろう。
肩がブルブル震えている。
「あのぅ、有夏さん? 稲川淳二のDVDを借りてきていいですか?」
「はぁ?」
「今夜は稲川淳二先生の語りを聞きたいんです。ノンストップで」
大袈裟に顔をしかめてから、有夏は「どぞ」と頷いた。
恐怖を癒すには、稲川淳二大先生に限るという自論を幾ヶ瀬が持ったのは、この時だった。
──パソコンにヘンな画像が入ってんだけど、コレ幾ヶ瀬のやつ?と有夏が妙なことを言い出したのは、その翌日のことである。
「夏だから…怖い話」完
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