夏だから…怖い話(13)




 腐女子の霊というのはどういうものだろう。

 いや、この女は隣りに住むクソビッチだ。
 有夏を狙って(?)しばしばお菓子を貢ぎにやってくる浅ましい女である。
 一度掃除を手伝わせたことがあったっけ。

 じっとりした視線が幾ヶ瀬の手に注がれている。
 正確には有夏の肩を抱いた手、その接触部分をガン見してるではないか。

「み、見るな……っ!」

「えっ?」

「有夏を見るんじゃない! 霊めッ!」

 思った以上に声が荒かった。
 クソビッチはもちろん、有夏でさえも驚いたようにこちらを見返す。

「霊めって……幾ヶ瀬?」

「あ、いや、その……」

 しまったというように視線を逸らせて、口の中で言い訳めいたことをゴニョゴニョ呟く幾ヶ瀬。

「やー、暑いですからねー。しょうがないですよー。夏ってこんな暑かったっけって感じですもんねー。そりゃ、沸きますよー」

 クソビッチがフォローしてくるのが、これまた腹立つ。

「霊って…霊めって……」

 有夏がいつまでも笑っているのも、また違う意味で腹が立つ。



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