「頭、沸いてんの?」
「あぁ……いや、沸いてない!」
「いや、沸いてる。ヤレヤレだな」
しょうがないなという風に有夏がため息をついた。
座っていたベッドから腰を浮かす気配がしたので、冷蔵庫からお茶を持ってきてくれるのかと思ったのだが。
そううまくは動いてくれないのがこの男である。
幾ヶ瀬の目の前。
わざわざ扇風機の風を遮るように座り込むと、有夏はニヤリと笑った。
「怖い話したげよっか」
「えっ?」
「だからぁ、こわいーはなしー」
「怖い話……え、何で?」
「今、幾ヶ瀬が言った。こわいーはなしー」
「ちょっと待って! 何かムカつく」
──何なの、その喋り方。
──何かすっごい腹立つわ!
──沸いてんのはそっちじゃない?
──そもそも邪魔なんだけど。
──扇風機の風遮らないでくれるかな!
──確かに暑気払いに怖い話をして気を紛らわせるのは有効だって言ったよ?
──言ったけど、今? おかしくない?
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【夏だから…怖い話14はコチラ】【完】
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