夏だから…怖い話(11)




 得意げに話す有夏は、理解せずに喋っているに違いない。

「ふ、腐女子の霊ね……」

 幾ヶ瀬はむき出しの腕を自らかき抱いた。

「普通に女の霊が出るとか、恨みを持った女の霊が出るとか言われた方が、まだ心安らかなんだけど? 何かむやみにゾッとするんだけど」

「よっしゃ! 涼しくなった?」

 有夏は自分の怪談が認められたと思ったのだろう。
 ニヤついている。

 ああ、この男は馬鹿だからな。
 馬鹿だからこの薄気味悪さが分からないんだなと、1人で納得する幾ヶ瀬。

「ま、まぁ…たしかに涼しくなった気はする、かな。うん」

 その時だ。

 ピンポーン──。

 チャイムが鳴った。

 ビクリ。
 身を震わせた幾ヶ瀬を見やり、ニヤついたままの有夏が玄関に向かう。



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