得意げに話す有夏は、理解せずに喋っているに違いない。
「ふ、腐女子の霊ね……」
幾ヶ瀬はむき出しの腕を自らかき抱いた。
「普通に女の霊が出るとか、恨みを持った女の霊が出るとか言われた方が、まだ心安らかなんだけど? 何かむやみにゾッとするんだけど」
「よっしゃ! 涼しくなった?」
有夏は自分の怪談が認められたと思ったのだろう。
ニヤついている。
ああ、この男は馬鹿だからな。
馬鹿だからこの薄気味悪さが分からないんだなと、1人で納得する幾ヶ瀬。
「ま、まぁ…たしかに涼しくなった気はする、かな。うん」
その時だ。
ピンポーン──。
チャイムが鳴った。
ビクリ。
身を震わせた幾ヶ瀬を見やり、ニヤついたままの有夏が玄関に向かう。
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【夏だから…怖い話14はコチラ】【完】
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