にんげんだもの(9)

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 気持ちも言葉も一向に通じる様子がないことに業を煮やしたか、幾ヶ瀬は咳払いを繰り返した。


「だ、だから…っ、いっと…う、の…ろ、ろく、お……円? まさかとは思うけど、あたっ…当たった、とか?」


 有夏の目元が僅かに険しく強張ったように見えたのは気のせいだろうか。


「当たったけど?」


「ウソッ!!」


 甲高い声で幾ヶ瀬が悲鳴をあげる。

 真っ白な顔が、今度は急に赤くなった。


「何なのそれ、何なのそれはっ! 俺が毎週のように買ってもちっとも当たんないのに、こんな……こんなに日頃の行いがアレなコイツにろ、ろくっ…6億なんてっ……」


 6億のところだけやけに小声になるのが、幾ヶ瀬の小心な気質を表しているといえよう。


 叫んで頭を抱えたまま、幾ヶ瀬はゆっくりと有夏を見つめた。

 それはそれはじっとりとした視線だ。


「……殺してやりたい」


「な、なに……?」


「有夏を殺して、俺も死ぬっ! うぁぁっ! こんな不公平あっていいわけないっ!」


 ウワーと叫んで、有夏に飛びかかる。


 しかしヒラリと躱されて、こたつ布団に突っ伏した幾ヶ瀬。

 そのままシクシク泣き出してしまった。


「にんげんだもの10」につづく
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