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しかし、店長への憎しみに凝り固まっている幾ヶ瀬は、そんな有夏の奇妙な笑顔に気付かないようであった。
「ねぇ、有夏? 聞いてるの? 結局チキンなんだよ。この時期、結局チキンさえ出しときゃ体裁が整うんだよ。毎日毎日チキンばっかり料理して、俺はもうチキンなんて見たくない。しかも去年と内容は完全に一緒なんだよ。メニュー名が違うだけで。それを今年の新作って売り出してるんだよ。ほぼ詐欺……いや、100パー詐欺だと思って」
こうなると幾ヶ瀬はしつこい。
グチグチといつまでも呪いの言葉を吐き続ける。
有夏としては慣れたもので、いつもは適当に聞き流すわけだ。
だが、今日ばかりは違っていた。
「辞めりゃいいじゃねぇの」
「へっ?」
にまにま。にまにま。
笑顔が崩れない。負のオーラを撒き散らす幾ヶ瀬に対して、それでも何だ、有夏のこの笑顔は。
何なんだ、この子は悪魔なのか──と、幾ヶ瀬はポツリと呟いた。
一瞬誤解するかもしれないが、ご存じ有夏はただのニートである。
こたつに入ってニヤニヤしているだけの、どうしようもないニートである。
「にんげんだもの3」につづく
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