にんげんだもの(10)

【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】


「毎週買ってたのに。きっと来週になったら1等が当たって金持ちになれるんだって信じて……。そしたら仕事は辞めて、ちょっとしたマンションを買おうって思って。あと電子レンジを新調しようと思って…なのに……おーっおおーーーっっ」


 号泣する男を見下ろす有夏の表情はさすがに強張っていた。

 人間の本質を目の当たりにして、さしもの有夏も肝を冷やしたようだ。


「い、幾ヶ瀬に半分あげようと思って……」


「ええっ、本当にっ!?」


 物凄いスピードで幾ヶ瀬が跳ね起きた。


「6億の半分っていったら3億円……十分だよ、有夏っ! ありがとう、有夏っ!」


「う、うん……」


 顔面の筋肉を驚くくらい弛緩させて、幾ヶ瀬がここにきて急に躊躇った様子を見せた。


「でも悪いなぁ、3億なんて貰っちゃったら……いやぁ、悪いよぉ」


「や、悪いのはこっちなんだけど……」


「ん? 何がぁ?」


「ううん…」


 有夏の表情が微妙だ。

 視線をさ迷わせて、結局、部屋の隅をじっと見つめる。

 目元は引きつっており、宝くじが当たった歓喜など微塵も感じられなかった。


「あの、有夏さん……?」


「うん、ごめん。何か、ごめんな……」


「あり……」


 何かを悟ったのだろう。


 幾ヶ瀬の、乾いた筈の目からブワッと涙が噴出し、眼鏡の内側を濡らした。


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