有夏チャンのこっちのおクチはウソがつけない4

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 有夏は静かに肉じゃがの玉ねぎに手をのばす。

 

 ごはんの上に乗せて、煮汁が染みていくのを楽しんでいるようだ。

 

「でも壊れたもんはしゃあねぇだろ。で、修理は頼んだのかよ」

 

「それが2日後になるんだって!」

 

2日だぁ? それじゃあ有夏のアイス……」

 

「アイスはいいでしょ、この際!」

 

 理不尽に怒られて、有夏が口を尖らせている。

 

「あの冷蔵庫、買ったばかりだよ? ここに引っ越してきた時だから……2年しか経ってないのに。有り得ない!」

 

 嘆きながらも、有夏が口に運ぶものをチェックする。

 

「ちょっとちょっと。玉ねぎいいから。まず肉食べてよ、肉」

 

「あぁ? いつもは野菜食べろって……」

 

「今日ばかりはっ……今日、ばかりはっ!」

 

 幾ヶ瀬のテンションについていけない有夏、コクコク頷いて牛肉の野菜炒めに手を伸ばす。

 

 ピーマンやモヤシと共に肉をつまむ様子に幾ヶ瀬は何か言いかけたが、さすがに口をつぐんだ。

 

2年か。早いな……で? 修理で直るのかよ」

 

「サービスマンが見てみないと分かんないって言ってた」

 

「ん。そりゃそうか」

 

 そこで幾ヶ瀬、思い至ったように顔をあげた。

 

「そうだ! 有夏んとこの冷蔵庫は? 俺のよりは小さいけど、頑張って詰め込めば……」

 

 展望が開けたとばかりに目を輝かせる。

 

 そこを、有夏の表情が水をさした。

 

「もうねぇよ」

 

「えっ?」

 

「うちにはもう冷蔵庫ないんだよ」




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