カラフル4







 ゲームから流れる音楽、コップの中で氷が立てる小さな音。それからエアコンの運転音。遠くでは蝉の鳴き声。 
 幾ヶ瀬が新幹線と在来線を乗り継いで──3時間ほどかかると言っていたっけ──そろそろ目的の店へ到着した頃であろうか。

 ちらりと置時計を見て、有夏はコントローラーを置いた。

「目痛ぇ……」

 そろそろ昼メシにするかと、テレビの裏に隠していたカップメンを取り出す。

 過剰に食生活に干渉してくる幾ヶ瀬の手前、普段は決して食べられないものだ。

 昼は作り置きしているシチューだか何だかを温め直して食べるよう言われた気もするが、そんなことはいちいち考えない。

「はぁ、至福……」

 ズズズ……と塩分の濃いスープを飲みほしてから、有夏はコロリとその場に横になった。

 腹が膨れたせいか、早起きしたこともあって睡魔が押し寄せる。

「今頃ヤツはこき使われてるんだろな。ざまぁ…」

 トロリと重くなる瞼。

 近くにあるレストランの厨房手伝いとホールを担当している彼の恋人だが、こうやって出張が入るのは初めてのことだった。
 何やかやと抵抗していたものの、結局は仕事が好きなのだろう。
 ゆうべ楽しそうに荷造りする様子に、有夏は声をかけるタイミングを失してしまったことを思い出す。

 ──そういや高校のときも弁当つくってくれてたっけ。

 クラスが違うのにいきなり弁当を差し出されたのが、幾ヶ瀬との出会いだ。
 彼に下心があったのかどうか。
 よく言えばのんき、悪く言えばアホの子の有夏は、毎日のように無自覚に弁当を受け取ったものだ。








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