「返事待ってずっとスマホの画面見てたら、悪い想像ばっかりしちゃって。俺の心配したとおり、暴漢が押し入って、有夏があんまり可愛いもんだから床に押し倒して服を剥いで両足広げさせて……ああっ!」
「……幾ヶ瀬?」
「暴漢5、6人に代わる代わる何度も……あああっ!」
「……なに言ってるの?」
「お尻に太いの挿れられて泣いてる有夏に、さて、口でも奉仕してもらおうかって無理矢理突っ込んで……うあああっ!」
「……ねぇ、なに言ってるの?」
「有夏もイヤだって抵抗するんだけど、イイとこ擦られて感じちゃうのを必死に我慢して……あああんっ!」
「………………」
「そんなこんなで、心配になって帰ってきちゃった。明日の始発で戻ったら仕事は何とか間に合うし」
テヘ、といった表情で肩をすくめる幾ヶ瀬。
「………………」
「そ、それはともかく、既読すらつかないから心配したのはほんとだよ!」
さすがに咎める口調だが、有夏に通じる由もない。
可愛らしく小首をかしげてから、とんでもない一言を放った。
「有夏、自分のスマホ……実はもう何か月も見てない」
「え?」
「有夏の部屋のどこにある……はず」
チラと自分の部屋の方向に視線を走らせる。
隣室の角部屋は例によってゴミ屋敷だ。
小さなスマホはどこに埋もれているやら。
当然、充電も切れていよう。
「あの中から探せと……。え、俺が? あっ、俺が探すんだ……。どうりで毎日帰る時メッセ送ってるのに反応がないわけだ」
「は? あの距離でいちいち帰る連絡とかキ……」
キモいんだけどと言いかけて有夏、言葉を噤む。
代わりにごめんと呟いた。
「でも幾ヶ瀬が帰って来てくれて嬉しいよ。1人じゃ寒かったから」
幾ヶ瀬の胸に頭を凭せかける。
「有夏……?」
戸惑ったような声。
有夏のいつになく素直な振る舞いに面食らっているのが分かる。
「ま、またエアコン強くしすぎてたんじゃないの。勿体ないじゃない。風邪ひいたら……」
幾ヶ瀬の手が、有夏の肩に触れるか触れないかのところをうろうろさ迷っている。
その手の気配を感じたか、有夏が低く笑う。
「さっき花火してたんだけど。知ってた?」
「あ、あーそっか。今日だったんだ」
「有夏、1人で見たし。つまんねぇし」
「あ、見たんだ! ベランダから? ちょっとだけ見えるでしょ。ビルの隙間から」
うん、ちょっとだけねと呟いて有夏はもたれていた頭をずらして、幾ヶ瀬の胸に顔を埋める。
「けっこうキレ。カラフルで。来年は一緒にみよ」
「え……何? それ何かのフラグ? 俺死ぬの?」
明らかにうろたえる幾ヶ瀬を有夏が睨む。
「フラグも何もないよ。来年、一緒に見ようって言ってるだけ!」
たっぷり2呼吸の間、幾ヶ瀬は固まっていた。
ゆっくりと息を吐くと、無言で頷く。
それから有夏を抱きしめた。
「カラフル」完
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