夏のなごり2

【【BL】隣りの2人がイチャついている 目次と各話紹介はコチラ】

夏のなごり1はコチラ





「………………」


「嘘だよ。冗談だって」


 あながち冗談ともとれないのだが。


 洗い物を終わらせて、幾ヶ瀬が部屋へ戻ってきた。

 若干、ハラスメントの匂いはするものの、これは幾ヶ瀬のいつもの軽口だ。


「でもさ、お詫びに映画見るの付き合ってよ。明日休みだから借りてきちゃった」


 見慣れぬレンタルショップの袋を手にしている。


「ネットで見りゃいいのに。ん? ツタヤじゃねぇの? 珍し」


「VHSでしか出てないんだよ、この作品。この店、ビデオデッキも貸してくれるから」


 見るとテレビの横に大きな紙袋が置いてあるではないか。

 ズッシリと重そうな袋の中には、今は滅多にお目にかかれないビデオデッキが入っているらしい。


「ビデオ? 懐かしっ。うちにはなかったけど、中島ん家で昔の戦隊もの見たわ」


「また中島かっ!」


「ビデオ見ただけだって。何だっけ…忍者の戦隊モノ。知ってる?」


「知らないよ、情報少なすぎるよ! ああ、またもや疎ましき中島が! ビデオデッキで有夏を釣ろうなどと!」


「あぁ、もぅ、めんどくせぇな。で? 幾ヶ瀬は、そうまでして何が見たかったんだよ?」


 幾ヶ瀬にアイスを舐めさせてやりながら、デッキの接続を手伝う有夏。


 いつもならしつこく嫉妬の言葉を繰り返す幾ヶ瀬だが、今日ばかりはVHSのソフトを持って上機嫌だ。


「じゃーん! 『稲川淳二の恐怖物語4』!! 『てるてる坊主』ってのが名作らしいんだよ」




0 件のコメント:

コメントを投稿