ヘンタイメガネの変態たる所以9







 フロアは結構広かった。
 新しいだけに結構キレイだ。

 受付の向こうに本棚がいくつもあって、更にその向こうに個室の扉がズラッと並んでいる。

 横の階段を見上げると、更に多数の本棚が見えた。

 どうやら上はオープンスペースになっているようだ。
 大きな机と、それを取り囲むように椅子が並んでいるのが伺える。

「あの、すみません。人を探してるんですけど」

 受付のお姉さんにコソッと聞いてやったってのに、ヘンタイメガネはエレベーター降りたところで仁王立ちしている。

「アーリカぁーーー!!」

 絶叫しやがった。

 何なんだ、コイツ。正気か!?

 数人のスタッフが慌ててこっちに来て、しかし一定距離をおいて近付いてこない。

 これは完全にアレだ。

 不審者への対応だ。

 ちなみにその不審者には、アタシも当然含まれてるわけで。

「あ、あの、違うんデス。ヒトヲサガシテ……」

 言ってみたところで彼らがアタシを見る目は変わらない。

 その時だ。

 奥の個室の扉が少し開いたのが視野の端に入った。

 騒ぎに驚いた利用者がそっと様子を伺っているに違いない。

 そう思ってヘンタイメガネを宥めにかかったのだが、奴はアタシを突き飛ばして奥へダッシュした。

「あ痛っ!」

 尻もちついたアタシ。

 ヘンタイメガネの通り道にいたスタッフが、凄い身のこなしで飛びのくのが見える。

 その瞬間に奥の個室の扉がバタンと閉まったのが分かった。

「有夏ぁぁっ!!」

 ヘンタイメガネ、扉に取りすがる。

 え、覗いてたのって有夏チャン?

 まさかあの一瞬で分かったの?




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