ヘンタイメガネの変態たる所以3






 もっとも有夏チャンはあまりマメではないらしく、せっかく見つかったスマホもテレビの横の棚に置きっぱなしにしていたようだけど。

「うっわ、ホントだ。どこにも繋がんない」

 いつの間に幾ヶ瀬がスマホを持ち出していたかも分からなかったらしい。

 彼が手にしているものをひったくって、中身をチェックしている。

「アドレス全部消されてる……ウソ、幾ヶ瀬が1コだけ残ってる。ウザっ」

 ものの役に立たなくなった電子の板を、有夏は床に放り捨てた。

「何してくれんだよ。姉ちゃんらや、友だちの連絡先分かんなくなったじゃん!」

「大丈夫だよ、有夏。お姉さんたちは実家に電話すれば連絡とれるよね。有夏の実家の電話番号は俺のとこに入ってるし。友達っていうのは、ここ数日連絡を取り合ってる中島って奴のこと?」

 有夏の表情が訝し気に歪められる。

「何で知ってんだよ。勝手に見たのかよ」

 図星だったらしく、幾ヶ瀬が一瞬怯む。

 それでも詰問する声はどんどん高くなる。

「中島って誰なの! 女!?」

「違うよ!」

「んじゃ男なの!?」

 語尾が震えた。

 多分これは、怒りか悔しさか。負の感情からくる声だ。

「どっちもダメなのかよ」

 有夏が嘆息する。

「うっそ、妬いてんの? バカじゃないの。中島ってアレだよ? バカなの? 中学から一緒で、高校ん時は有夏と3年間同クラだった……幾ヶ瀬、バカだろ」

「うっ、馬鹿じゃない……」

「知ってんだろ? 朝寝坊がひどくて遅刻ばっかしてた。んで、迷子を交番に連れてったから遅れましたって毎日言ってた凄まじきバカ、その名もナカジマ……」

 何ひとつやましいことはないというように、有夏は呆れ顔で説明を始めた。

「たまたま連絡きてて……2年ぶりか? んで、ゲーム貸したげるってなって。困るんだけど? 有夏だって友だちくらいいるし」

「ああ、疎ましき中島よ。勿論覚えているさ。俺でさえ高2の時に1回しか有夏と同じクラスになれなかったっていうのに。あの糞坊主はぬけぬけと3年間も……。朝だけじゃなくて一生寝てろって感じだ」


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