つぎのあさ4

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 脳味噌が弱っていたのは自分の方だったと幾ヶ瀬、唇を噛む。

 

「そうだ、笛ドロボウの話だった。有夏の笛を盗んでピロピロピロピロ吹いて街を回ってたヘンタイ幾ヶ瀬の話だ」

 

「あ、有夏?」

 

 ピロピロ吹いてなんかないのに。

 街を練り歩いたりなんかしてないのに。

 ヘンタイなんかじゃないのに。
 機嫌をとるつもりもあって、今朝のおにぎりは有夏が好きな鮭むすびにしたのに。

 いや、立派なヘンタイだろと遠くからツッコミが入るが気にしない。

 

「ま、まぁまぁ。今となってはこういう仲になったんだし。もういいでしょ」


「いくないし」


「あはは。今は有夏の笛を俺が咥えてるんだから、ねッ☆」


「……上手くもねぇし」


 沈黙。


 おにぎりやリンゴを咀嚼する音だけが食卓を支配し、双方気まずそうに視線を泳がせている。


 口を開いたのは有夏からだった。


「それに幾ヶ瀬、体操服も盗んだって」


「ぬ、盗んでないよ! ちゃんと洗って返したでしょ。ちょっと匂い嗅いだりしたけど」


「うっわ……」

 

 再びの沈黙。

「……お願い。黙るのやめて。ヘンタイってなじって。罵倒されたほうがずっといい」

 

「あっ、はい。大丈夫です」

 

「なんで急に敬語……!?」


「つぎのあさ5」につづく

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