かきまぜる行為4

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 そう言って嘆息する彼を一睨みする有夏。


「今は鋼錬が読みたいんだよ」


「ハガレン? 何?」


「何って……高校ん時貸しただろ。これは名作だって! 幾ヶ瀬だって良かったって言ってたし」


「ああ、鋼の何とかだっけ。そうだよ。有夏、持ってんじゃん。何、実家に置いてきたの? 取りに帰ればいいじゃない」


「おいおい、知ってんだろ。有夏ん家は狭いんだよ。置いてくるわけないじゃん。本なんて置いてたら姉ちゃんらにソッコー売られるわ」


 彼がブルリと身を震わせたのは「姉ちゃんら」を思いだした為か。


「んじゃ、ここに持ってきてるってこと? 有夏の部屋のどこかにあるんでしょ。駄目だよ、探そうともしないでまた新しく買うなんて……痛っ!」


 有夏の平手が幾ヶ瀬の側頭部を張る。


 見ると有夏、腹立ちを抑えきれないという風にこめかみを震わせていた。


「覚えてねぇのかよ。幾ヶ瀬がっ、古紙に出したんだろが!! 有夏の知らない間に!」


「え、そうだっけ?」


「あの傑作を……!」


「ご、ごめんってエリカ」


「エリカって誰だよっ!!」


 怒声が響く。


 幾ヶ瀬が狼狽えたように「ごめん」と繰り返した。


「エルリック兄弟と有夏がごっちゃになっちゃった」


「……しっかり覚えてるみたいじゃねぇの。鋼錬の内容」






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