ランチ休憩に、蜜2

「雌豚共……あ、お客様がランチ平らげて……召し上がってる間に速攻で終わらせたからね。せっかく家の近くで働いてるんだ。有夏と一緒にお昼食べたいもん」

 笑顔がどう見てもニコリではなくて「ニヤリ」なのが、幾ヶ瀬という男の性質を表しているようだ。

「……メスブタって言った?」

 唖然としてこちらを見やる有夏に、やはりニヤッと笑いかける。

「思い切って転職して良かった! 社畜の頃は暗黒だった。あの頃は忙しくて、有夏にもあんまり構ってあげられなくて寂しい思いをさせてたし……」

「や、有夏、全然?」

「こんなに近いんだから有夏もうちの店に食べにおいでよ。いや、駄目だな。前1回来てくれた時、有夏のあまりの可愛さと格好良さに常連やバイトの雌共がざわついてた……。身の程もわきまえず、俺にお友だちを紹介してくださいなんてきたもんだ。あんな雌豚共の視線に晒されてみろ。可愛い有夏が汚される」

 ズズ……。

 有夏が無言でスープを飲む。

 どうやらスイッチの入ってしまったらしい幾ヶ瀬に、迂闊に話しかけるのは徒労且つ不毛であると知っているのだろう。

「おいしい? 有夏」

「う、うん……」

「有夏が美味しそうに食べてくれるのが一番幸せだよ。あ、そうだ、有夏」

 幾ヶ瀬が笑みを浮かべる。
 今度はどう見ても「ニタッ」だ。

「朝ご飯はちゃんと食べた? 俺が出勤する時、有夏寝てたからおにぎり作っといたの。具だくさんのやつ」

「あーうん、食べた食べ……んっ」

 仮にも食事中だというのに。

 唇にむにゅりと柔らかな感触。

 口中に残ったスープと唾液を、侵入してきた舌がかき回す。

 2人の口の中が同じ味になったところで、ようやく唇は離れた。

「朝ご飯のお礼のキス」

「……何、その習慣」

 呼吸を整えながら有夏、顔をしかめる。

「覚えてないの? 高校の時からの約束じゃない。有夏が購買のパンや学食ばっかりだから、俺がお弁当作ってあげて。お礼としてお弁当1回につきちょっとだけキスさせてって……」

「うっざ。お礼って……キモ。それって……あっ」

 有夏の手が幾ヶ瀬の腕をつかむ。
 細い指先が袖をギュッと握りしめた。

 唾液を交換し合う音だけが室内をいやらしく満たす。

「ちょ、も……いいって。何回すんだよ。いいかげん、鍋……」

 身体を引こうとする有夏の腕と肩を、両腕を使って拘束して唇をついばみ、舌先で遊ぶように下唇を舐めて吸い付き、舌を挿れる。

 同じ行為を繰り返すたびに有夏の抵抗は弱くなっていった。

「今日の晩御飯の分も……先に。それからおやつの分も……」

「おやつぅ?」

 上体に体重をかけると、彼の身体は呆気ないくらい簡単に床に倒れた。

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