不毛な目覚め。幾ヶ瀬は悟った。そんな朝。(6)【完】

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「んもう!」と呻いて不満を露にすると有夏はムクムクとベッドから這い出てきた。

 よつんばいの姿勢でキッチンまで這っていき、棚に置いてある食パンの袋を引きずり下ろす。


「今日はパンにするの? じゃあ、トースターで焼いてジャムを塗るね。有夏、その間に顔洗って着替えをして……」


 すっかりお母さん然とした調子で幾ヶ瀬がキッチンに向かうと、駄々っ子の有夏は頬をプーッと膨らませた。


「もう間に合わねぇし! だって9時だもん。もぅいいし! 有夏、行くから!」


 食パンくわえて玄関を飛び出して行ってしまった。


「い、いってら……有夏? パジャマで学校行ったんじゃ?」


 Tシャツとジャージのズボンなので、正確にいうとパジャマではないとはいえ…。


 有夏の背がアパートの階段に消えるまでの短い距離を見送って、幾ヶ瀬は今度は妄想した。


 パジャマの有夏が「ちこくちこく~」と言いながら、食パン咥えて走ってる。

(食パンで口が塞がっているから「ちこく~」なんて発言できないだろうという指摘は愚の骨頂だ!)


「うっわ、交差点で出合い頭にぶつかりたい……」


 それがロマン…いや、浪漫だ。


 そう、それこそが浪漫なのだと幾ヶ瀬は悟った。



「不毛な目覚め。幾ヶ瀬は悟った。そんな朝」完

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