最後の攻防(8)

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 有夏がもう一度「はっ!」と笑う。

 小馬鹿にした態度に、しかし幾ヶ瀬は口元をデレデレと緩ませた。


「有夏のことは俺があたためるからっ!」


 果敢にも、もう一度同じ台詞を吐く。


「ならば、どうやってあたためるのかと仰るので? 有夏サン?」


 目を細め、無言で首を横に振る有夏。

 一気に室温が下がったことに気付かないのか、幾ヶ瀬は満面の笑みを崩さない。


「ハイ! 運動をすることによって、自然とカラダはあたたまるのです!」


「運動…………」


 有夏の目は、もはや糸のように細くなっていた。

 幾ヶ瀬の謎テンション。

 二人のあいだに横たわる距離感が、急速に開いていく。


「最後の攻防9」につづく

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