設定18℃にしていそしむこと4


「別に」

「陰湿……」

 幾ヶ瀬の笑みは変わらない。
 それくらいで怯む彼でもないからだ。

「怒ってなんかないよ。有夏が震えてるから心配なだけ。ほら、唇が白くなってる」

 顔を背ける有夏の細い顎を指で絡めとり、身を引く暇すら与えぬように唇を寄せる。

 互いの息がかかる位置で、幾ヶ瀬はにやりと笑って口を開けた。

 唾液に光る舌が、有夏の唇をねとねと舐め回す。

 有夏が目をギュッと閉じたのは受け入れる為というより、目の前の男の異様な気配に身が竦んだからに違いない。

 固く塞がれた唇の間を幾ヶ瀬の舌先が押し広げ、ゆっくりと侵入していく。

 自らの熱を与えようとでもいうのか。奥へ。奥へ。

 シーツを握り締める有夏の指先が細かく震え、徐々に力が抜けていくのが分かる。

 有夏の口中をかき回しながらも、それを横目で確認した幾ヶ瀬の左手が恋人のTシャツの裾をツイとめくった。

 薄い腹に指先をするする滑らせて、上へ上へめくりあげていく。

 指は乳首に触れる寸前に止まった。

「んっ……」

 塞がれた口から嗚咽のような吐息がもれる。

 わざとベチャっと下品な音をたてながら、幾ヶ瀬はようやく唇を離した。

 ハァハァと大きく息をつく有夏を、もちろん解放してやるつもりはない。

 その細い身体をベッドに押し倒し、腹の上に跨る。

「いい眺め」

 透明感のある白い肌。
 その胸元は、まるで薄桃色の絵の具を一滴落としたかのように赤く染まっていた。
 首筋と頬も。
 耳朶などはまるで嬲られたように真っ赤だ。

 拒みたいのか、それとも次の動きを期待しているのか、顔を背けたまま固まっている。

 露わになった両棟の突起を指でつまむと、有夏の全身が硬直した。

 見られているだけで赤身を増した乳首は、もう固くなっている。





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