不毛な目覚め。幾ヶ瀬は悟った。そんな朝。(2)

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「ぜぇっ……はぁっ……」


 見下ろすベッドには、うっすら微笑んで眠りにつく青年が。

 やけに小ぎれいな顔立ちで「スヤスヤ」なんて擬音が溢れていそうだ。


「有夏……こいつ……」


 目元をビクビク痙攣させて、物騒な気を垂れ流す幾ヶ瀬とは対照的である。


 童話の中で眠っているのは大抵が姫だが、こんな王子がいてもおかしくないと(なまじツラが良いものだから)思わせる印象なのだが。


 だが、この王子はタチが悪い。


「ぜぇぜぇ……いい加減にしろよ。絶対に起こしてって言ったよね。ねぇ、8時には絶対に起こしてって。今、半なんだけど!?」


 ──スヤスヤ。


「半時間ほど叫び続けてるんだけど、俺!? 朝から喉がつぶれちゃったんだけど!?」


 嫌だ嫌だ。

 今日はランチの時間、ホールに出なきゃなんないのに。

 すでに声ガラガラってどうしたらいいの、なんてブツブツ言っている。


 ──スヤスヤ。


 それでも表情を崩さず眠りについたままの恋人。

 心地よさげな寝息が規則正しく聞こえてくる。


「……ひょっとして、有夏、起きてるんじゃないの?」


 あまりに起きないものだから、幾ヶ瀬がふとそんな気になったのも無理はないだろう。


「今から3秒以内に目ぇ覚まさないと、フライパンで頭殴るよ? さーん、にー、いーち……」


「不毛な目覚め。幾ヶ瀬は悟った。そんな朝。3」につづく

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