不毛な目覚め。幾ヶ瀬は悟った。そんな朝。(1)

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「いいかげんに…こいつ、ホント」

「くそっ、いいっかげんに……!」

「こいつ…くそっ、こいつは…!」


 現在の時刻、午前8時30分──誰かさんの言うところの「早朝」という時間である。


 安アパートであるプラザ中崎では、薄い壁伝いに各室の慌ただしさや、廊下に響く速足が間近に聞こえるのだ。

 そう、世間は動き出す時間なのである。

 朝が遅い幾ヶ瀬家はその喧噪を、普段は無視して寝静まっているのだが。


「ぜぇっ…いいかげんにしろって……」


 肩で大きく息をついて、ベッドの脇に仁王立ちしているのは長身の男。


 苛立ちが外見に表れているというか、眼鏡がキラーンと光っている。

 窓から差し込む朝陽が反射しているわけだが、似合わない可愛らしい柄のエプロンと相まって異様な印象を醸し出していた。


 察するところ、この男──幾ヶ瀬自身も慣れぬ早起きに頭が回っていないようだ。


「おきてありか……起きろ……起きろっ、有夏!」


 僅かな静けさのあとに、幾ヶ瀬の呼吸音だけが虚しく流れる。


「不毛な目覚め。幾ヶ瀬は悟った。そんな朝。2」につづく

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