最後の攻防(3)

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「ああ……分かった、分かった。こうしよう」


 ヤレヤレとでもいうかのように首を振って、有夏は立ち尽くした。

 右手を腰に、左手で前髪をかきあげる。

 無駄にキメたポーズに幾ヶ瀬のこめかみがビクビクと痙攣するが、有夏が気に留めるはずもない。


「ギリッギリまで出しとくこう。梅雨すぎるまで。それでいいよな」


「いやいやいや、よくないですよ? 有夏サン?」


 今度は幾ヶ瀬が己の額に手を添え……いや、「イィーーーッ!」と唸って髪をかきむしった。


「梅雨って……正気なの? やめてよ。ゾッとするよ。虫わくってば!」


「ムシハ、ワカナイ」


「いやいやいや、根拠ないでしょ?」


「ムシハ、ワカナイ」


「イィーーーッ!」


 どうやら二人とも、歩み寄る気配はないようだ。


「最後の攻防4」につづく

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