覗いたときは事後でした5【完】


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 叫ぶ有夏に布団をかけてやりながら、幾ヶ瀬はだからごめんってと言って笑った。
 それから「あっ!」と声をあげる。

「そうだ。イクセさんじゃないけど、俺も来週出張なんだよ」

「は?」

12日。有夏と離れるのが辛いから断ったんだけど、店長が分かってくれなくて……」

「……そりゃ店長もびっくりしただろな」

「有夏、寂しい思いさせるけど……」

「あー? はいはい、だいじょぶ」

 有夏の声が軽い。

 幾ヶ瀬が覗き込むと、彼は両手で自分の顔を隠す。

 手首をつかんで強引に開くと、有夏はニヤニヤ笑っていた。

「……有夏、何が楽しいの?」

「あ、いや別に。12日さみしいなーっと。淋しいからゲームでもしようかな。それともゲームかなっと。ドラクエかなぁっと!!!」

 自由な生活を想像して浮かれているらしい。

 幾ヶ瀬は脱力した。

「有夏だって俺がいないと困るでしょ」

 それは確かだろう。生活全般で、幾ヶ瀬は有夏の全てを握っている。

「別に平気。1泊くらい。それに幾ヶ瀬、社蓄時代はしょっちゅう出張してたじゃん。コックにもそんなのあるんだ」

「……あの頃のは出張じゃなくて、単に帰れてなかっただけ。20時間ぶっ通し勤務とか普通だった」

 幾ヶ瀬、遠い目で宙を見つめる。

「……あの頃はろくに家に帰れず、有夏に淋しい思いをさせたね」

「や、有夏、全っ然!」

 隠しきれてないその笑顔に、幾ヶ瀬はため息をつく。

「まぁいいか。甘いものでも食べる?」

「おー、いいねー」

「ぜんざいでも作るか」

 軽く唇を合わせてから、幾ヶ瀬は立ち上がった。

「小豆ゆでるから1時間ほど待ってね」

「は?」

 そこから? 有夏が絶句した。



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